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「良かったじゃないか。親御さんが見つかって。すみません、こいつ記憶が一部欠損してるみたいで。自分の名前すら憶えていないありさまで」 「ええっ?」  ぼうっとしたまま、期待した反応を全く見せない娘に、母親は酷く落胆したようだった。一緒にやって来た父親と目を合わせると、今度はキッと鋭い目線を敦に向ける。 「それは何?脳傷害でも負っているということ?あなた、そういう異常に気付いておきながらなぜ今まで放っておいたの?すぐに病院で診てもらえれば回復も早かったでしょうに」 「……俺にとっては赤の他人ですから。普段の彼女がどういう感じなのかも知らないのに病院受診の必要性なんか分かるわけがないでしょう」 「ああ、あのねえ!あなたは知らないでしょうけど、この子はうちの会社の大事な跡取り娘なの。これから良い大学に行って、良いお婿さんを取ってもらわないと困るのよ。それなのにこんな腑抜けじゃ話にならないじゃない」
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