9人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「居場所がなかったんだよぅ。心が安らげる場所が。だからこの子は歩道橋の上から飛んだんだ。そして偶然ねぇ、このトラックのホロの上に落ちた」
「え……?何?何を言ってるの、この子は」
「その拍子に魂が抜けてぇ。だからあたしはその代わりに入ったんだぁ」
狼狽する母親を気にする素振りなく、リズミーは冷笑し、荷台へと踵を返した。そしてそこから一匹の鼠を拾い上げる。
「あっ!そいつは……」
初めてリズミーに会った頃、荷台から追い出したはずの小鼠だった。
リズミーはそれを手首に乗せると、自分の両親の方へと持ち上げて見せた。
「ほいっ」
「きゃあああっ!な、何をするの?やめなさいっ!」
「えぇ?これが、今のあんたたちの娘だとしても?」
「………えっ?」
「そーだよ。これの中身は、あんたらの娘だよ」
何を言っているのか、理解できるものはこの輪の中にはいなかった。
敦も次々と発覚する驚きの真実と展開に口を挟むことが出来ない。
キーキーと鳴く鼠は何かを母親に訴えようとしているようにも見える。
リズミーは嫌がり肩をすくめる母親の腕に強引に小鼠を渡した。
最初のコメントを投稿しよう!