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引き込まれる瞬間
「なんか面白い人ね」
「そぉ? 普通だけどねー」
笑った顔も眩しい! でも、なんかとっても温かくて嬉しい自分がいた。
そんなことを考えているうちに、蓮は「できたんじゃない?」とパエリア覗きながら火から下ろしてくれている。それを手際よく分けてくれた。
できる男子だ!
これは……本気でできる男子だ!
私は「はい」と手渡されて、嬉しくて「ありがとう」と受け取った。
「俺が作ってないのにマウント取ってごめんね」
「いえ、蓮はなんか慣れていてスマートだよね」
笑顔でそう答えて……あれ? これって褒めて……ない?
焦って蓮の顔を見ると「しょんぼり」している。
「あ、ごめんなさい! 違うのよ! そーいうわけではなくて」
慌てて言い訳を考える。その私のアタフタした姿を見てクスクスッと笑っている蓮に……遊ばれている感が今はするぞ。
「蓮はなんでソロキャンプへ」
私は話題を変えるかのように、そう話を振った。
気が付いたら辺りは真っ暗だった。焚火を囲み、食事を食べながら返答を待つ。
「んー、仕事始めたらあまりこういう自由も無いんじゃないかなぁ、と思ってかな」
「仕事?」
私は不思議になって尋ねる。そう言えば研究室入って、将来何がしたい人なんだろう?
「将来は再生医療とかに携わりたいんだよ」
そう言うと、蓮は空を見上げる。
「一人でも多く笑顔になってもらいたいじゃん」
星空を見上げている蓮の眼差しは、その先を「未来」を見据えていた。私はその瞳に吸い込まれるように見入ってしまっている。
私はそんな先のことを考えていただろうか。私は将来どうしたいんだろうか。
教えてくれた蓮の「思い」は本当にひとかけらであろう。それでも私の心にとても深く残っていた。私の方を向いてほほ笑む蓮の表情は……本当に〝魅力的〟だった。
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