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気怠い意識の中で
自分の身体が移動しているのを感じていた。その感覚で意識が戻った感じである。
目を開けようとする。しかし、瞼が重い。
私はその重さに負けて……。
──また眠りに入っていった。
次、意識の覚醒はまた訪れた。
目を開けてボーっとする視界を見渡そうとするが、よく分からない。
思考回路が働いていないような虚ろな感覚だった。
誰かが私の髪を撫でている。
「みず……ほ」
優しく名前を呼ばれながら撫でられる感覚に、私は……また堕ちていった。
意識が覚醒していく。
痛い。身体が痛い。私は寝返りを打とうとして、横を向く。
横を向いて、目を開ける。
今までよりは意識も身体の感覚もハッキリしていた。しかし、気怠さは残っており、移動はままならない。
だが、思考回路はだいぶ正常化している様子で、私は状況を把握しようと起き上がる。
起き上がって見回すと、自分の寝ていたベッドと傍に机があるだけ……。
「これ、仮眠室……?」
私は体力が尽きてバタンッとまたベッドに倒れ込む。
あるのは、ベッドと机があるのみ。
ここは私、見たことがある……浬くんの研究室に併設されている仮眠室だ。
机の上に置いてあるものに目が釘付けになってしまった。全思考回路をフル回転させる。
その時、扉が開いて「目が覚めた?」と浬くんが入ってきた。
「浬くん……あの……」
私は状況を聞こうとして、言葉を飲んだ。いや、恐怖で動けなくなったのだ。
私の思考回路で謎を解いていた『それ』が私に牙をむく……そんな感覚が襲ってきていた。
浬くんは、机の上にある注射器とアルコール綿を手に取る。
「ちょうど時間だね」
腕時計を見ながら私の方へ歩み寄ってきた。私の恐怖は頂点に達していた。
「そ……れ……」
身体の気怠さが抜けていないのと、恐怖が重なり言葉が出ない。
「大丈夫、ちょっとチクっとするだけだから」
そう子供に言い聞かせるかのように……笑顔で私に告げると私の腕を掴んだ。
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