必死に足掻く

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必死に足掻く

「ダメっ……いや……!」  私は恐ろしくなって必死に抵抗を試みるが、自分の上体も起こせない私の腕に力が入るわけでもなく……満面の笑みで微笑む浬くんの持つ注射が刺さる痛みが私を襲った。 「なん…で、こんな……こと」  そこには私の状態を見て満足そうに笑う浬くんが見下ろしている。  私は呂律の回らない状態で、なんとか浬くんに詰問した。 「心配しなくても、瑞穗は眠っている間に『全て手続きは終わらせる』から。安心して、今度目が覚めたら、僕たちは夫婦なんだよ」  嬉しそうに恍惚と語る浬くん……。  私は、眠らされている!? 浬くんは強制手段に出ている!  私はどうしたらいいのか分からなくなって、只々首を横に振った。  浬くんは私の頬を撫でると「ゆっくりおやすみ」と囁く。  ウチと浬くんの家は昔からお知り合いで仲がいい。  私も浬くんとはお兄ちゃん的存在として、物心ついた時から一緒に育ったような感じだった。くっついて離れない私を浬くんは嫌な顔一つせず、手を取ってくれた。
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