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微かな希望
──おと……がする。
その物音に気付き私の意識は微かに覚醒していた。
私は瞼も開かない状況で、音に対しては過敏に反応する私……グッジョブ!
私はその音が何かを見極めようと、気怠さの中必死に意識を覚醒させていた。
「くそっ……本気でめんどくせーな」
そんな声が微かにする。
(浬くん……ではない)
安堵する自分がいた。そしてこれは好機だと確信する。
浬くんの声は自分が一番よく知っている。扉の向こうのその声は浬くんではないことは自分にはよく分かっていた。
(誰でもいいから!)
私は自分の存在を知ってもらおうと画策するため、必死に重い瞼を持ち上げた。
そこはやはり浬くんの研究室の……仮眠室なのは変わりなかった。
殺風景な部屋の中、傍にあるのは……セットしてある注射器と、バイアルの小瓶だけ。
他に手の届きそうなところに物は何もなかった。
重い身体を少し起こし、私は力いっぱい手を伸ばす。
必死になって手を伸ばすが、容易にテーブルの上の物には手が届かなかった。
なんとか這いずり前へ前へ身体を持っていく。必死になって手を伸ばし……何とか小瓶に指が当たった。
私は無我夢中でそのベッドサイドに置いてあった机の上のその小瓶を掴むと、力いっぱい扉に向かって投げつける。
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