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お隣さん
❖ ❖ ❖ ❖
その日はキャンプへ行くから、クルマで登校していたのだ。
私の趣味は最近始めた『ソロキャンプ』である。最初はちょっと怖かったし寂しかったけど……焚火に当たって星空を眺めていると、イヤなことは忘れられることに気が付いた。それ以来毎週のように出かけている。
食材を買って、私有地の所有者の方に挨拶に行く。
「今日、もう一人ソロキャンプに来てるから」
という説明を受けて、一人ではないことを喜んでみたり、悲しんでみたり。けっこう一人の時間って大切なのよね……と思いながら、現地に着いた。
(やっぱり挨拶ぐらいはしておいた方がいいよね)
と思い、隣で設営を終えてコーヒータイムしている『お隣さん』の方へ出向き挨拶をする。
「今日はお隣おじゃまします」
「いえ、こちらこそ」
その声に改めてその人を観察する。
うわぁぁぁぁぁぁぁ、めちゃくちゃイケメンかも。
灯弥もイケメンだけど、こちらの方もなかなかイケメンですよ。なんだろう、落ち着いたイケメンですよね。なんて思いながら、私は一人キャンプ地で設営を開始した。
そして、設営が終わる頃には日が暮れていた。
暗くてもランタンあるし、LEDライトも持ってきている。特に問題はない。
「火起こししようかなぁ。お腹空いたし……」と思いながら焚火台を組み立てる。その時お隣さんのいい匂いにつられてガン見してしまった。「焼肉かぁ~それも美味しそう」などと考えている時に、お隣さんと目が合う。
やばっ! 私ガン見してた……どうしよう、めっちゃ飢えた子に見えちゃったのかも。挙動不審していたのか、お隣さんはクスッと笑うと『おいでおいで』している。
「アレだったら、一緒にどお?」
「え? でもせっかくソロキャンプされているのに、私がいたら……」
私はおずおず質問してみる。
「あー別に俺はソロにこだわってるわけじゃないから」
爽やかスマイルで返事が帰ってきて、くらくらぁと動悸がして眩暈がする。
(ヤバイ……殺人級のイケメンスマイルだわ)
と今回の出会いに感謝して、お仲間に入れてもらうことにした。
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