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浬くんの足取り
「蓮、私ちょっとパニックで……」
私は自分の置かれている場所に見当もつかず……浬くんの部屋ではないことは理解しながらできる限り頭の中の整理整頓を行っていた。
それでも私の抜け落ちた記憶はどうしても埋まらない。ピースの欠けたパズルである。穴だらけの記憶が連鎖など……今の私の頭では難しいようだった。
二人きりの病室に静寂が落ちる。蓮は、椅子を持って私の傍に来ると、椅子を置いてベッドの傍に座った。
「教授が会議に資料忘れたから、俺が取りに行ったんだよ。そしたら物音がして……最初は気のせいかな、と思ったんだけど──なんか気になって」
そう説明しながら蓮は私を見て「よかった……」と私の掌を握りしめ安堵する。
私を助けてくれたのはやっぱり蓮だったんだ……。それに気づくと安堵からか体中が今更ながら震え出した。
「怖かった……ホントに怖かったの」
私は我慢できずに泣き出してしまった。
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