記憶のない朝

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記憶のない朝

 私の方は魚介類を買ってきていたので、惜しみなく提供し、二人で焼き物を堪能する。今日は失恋キャンプなので、アルコールも忘れていない。ビールにカクテル、チューハイ――お隣さんに引かれちゃったかな? っと焦ったが、お隣さんはまたクスッと噴き出すと、「おーけーおーけー、かなりアルコール好きなんだな」と笑いながら一緒に飲んでくれていた。  なんか空き缶数本転がしていた気がします……ハイ。  なんか別れた元カレのグチを散々言っていた気がします……ハイ。  私に男運がないことをグダグダ言っていた気がします……ハイ。  あーなんか気持ちいい。  スッキリしたぁ~!  良い感じにほろ酔いで眠い。  眠い――! 「おはよう」 「う……うんっ……おは……よ」  おはようの『う』まで言う前に、ハッとして目が覚める。なぜ……目の前に眩しいイケメンが居る!?  今、自分のいる場所が把握できない。冷や汗をダラダラ流しているのを見てそのお隣さんはクスクス笑っていた。 「覚えていないの?」  そう言われて、飛び起きる。  そこはテントの中だった。  ただ違うのは私のテントではない。私のテントより一回り広い。シュラフも……寝袋のことだが、これは私の持っている一人用ではない。だから私は一緒に寝ている状態になっていた。  私はどうやらほろ酔いではなく泥酔してしまった様子である。 「キミが急に眠いって俺のテント入ってくるから」  笑いながら言っているお隣さんの言う事は正しいようである。その証拠に私は昨日の服のままシュラフに包まっていたのだ。 「すみませんっ! ほっんとうにすみませんっ!」  私はその場にとっさに正座して土下座する。何たる醜態! 何たる……あーもう軽蔑された!  私はパニックになってただひたすら謝る謝る! 「んーまぁ、こういうハプニングも新鮮だったから」  お隣さんは微笑みながら、私の頭をポンポン撫でてくれた。  私は平謝りしながらその場を去り、設営したが使うことなく自分のキャンプ用品を仕舞うと、その場を後にした。  もう何やっていたのかわかんないスピードでこなしていて、我に返ったのは帰りの運転中だった。
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