新宿区歌舞伎町ホストクラブギルティの犯人と元刑事ホスト

1/1
前へ
/40ページ
次へ

新宿区歌舞伎町ホストクラブギルティの犯人と元刑事ホスト

「プロフィール確認したら、君の足のサイズ28だったね。まあ、これはそもそも、君の誘導に乗って、こっちが勝手に遼君だと思ってたから、ややこしくなっただけなんだけど…」 相手の口元の笑みはまだ消えない。 「ホテルにあった名刺もとっさの判断にしては良かったよ。バック・スペースの代表、山下にも確認させたけど、遼君の物は無かった。遼君が自分の名刺は抜いて、他のホストに疑いを持たせようとした…ように見せたかったんだよね。小細工だけど」 「昨日から連絡つかないと思ったら…蘭丸さん…山下?捕まったんすか」 「君が雇ったナイジェリアマフィアもだよ。部屋から血もべったりの証拠が見つかってるから、彼らも言い逃れはできない。対象が絞れてるから、警察は遺体から彼らのDNA鑑定も依頼してる」 あーあ、とでもいうように、口元を歪ませ、頭の後ろを掻いた。 「山下?って、店の事全部話したんすか?」 「うん、こっちも子供を火葬した車や防犯カメラ…証拠はこれからだけど、確実に集まるって言ったら観念したみたいだね。ほぼ全部警察に話してるみたいだ…」 山下正樹は、凡そ五年前、バック・スペースの代表に就任したが、店の売り上げが芳しくない日々が続き、次第に未成年の客を年齢確認をあいまいにして入店させるようになっていったという。 次第に少女たちを繋ぎ止める手段として、ホスト達には最も安易な枕営業をさせたが、そのうち少なからず妊娠を訴える少女が出てきた。 中には売春で遊びの金を作ったり、生計を立てているものがほとんどだったため、誰の子か分かったものではなかったが、下手にDNA鑑定をされたり、また、最後まで搾り取る為には産ませて里子に出す…と説得し、始末するのが、最も最良と考えたという。 「何が始末だよ……何が最良だよ、ばっかやろう…」 山下の証言を共有された生活安全課の刑事達は、そこここで憎々しげにつぶやいたという。 そんな時、実家の火葬場で使っているペット火葬の車を使って燃やし、処分してくれるルートを思いついた。 「うちの実家が…昔赤んぼう処理してたって…それがきっかけで親父のおじさんが死んだって…聞いたことがあって、うちのケツもちの鮫島組の古参の人に話したら、そのルートをたまたま知ってたんですよ。うちの火葬の車だけ用意すれば、あとは一体50万で最後までやってくれるって…俺が?!違う違う!絶対無理ですよ。赤ん坊なんか殺せませんて!女の子にはホテルとか病院じゃないところで産ませて、そのあと組の人が引き取りに来て《管理人》って呼ばれてる人に渡す…って流れで…」 ここまで山下が素直に話したのは、桃子が掴んできた金の流れというゆるぎない証拠があったからであった。 桃子は、自分の馴染の客であるナイトワーク専門の税理士、大谷に確認したところ、バック・スペースの税務も担当していたことが分かった。 「店ぐるみでやってたとしたら、絶対に金の流れがあるはずだよ」 そう言って桃子は、大谷にこう提案した。 「大谷さんと桃華がごはんの約束してて、事務所に迎えに行って、たまたまバック・スペースの帳簿パソコンで開いたままおトイレ行っちゃって、桃華が勝手に印刷出しちゃったの。そういう事ってあるよね?ね?あるよね? 」 その時の大谷の心情は、想像に難くない。 とはいえ、過去五年間の帳簿の雑費の中に、使途不明金と言える金の動きがった。山下の証言と同じ、50万単位。月平均100。無い月もあるが、逆に多いときは400万もの金額に及んだ。 数字の証拠は嘘をつけばつくほどぼろが出る。 山下も結局ここが突破口となって、全てを証言しだした。 「…ところがさあ、燃やした遺灰おいてた家が見つかって、毎日テレビで報道されたもんだからか、その《管理人》と連絡取れなくなったとか言いだしやがって…代表…山下が当てにしてた鮫島組も、途端に手を引きやがってさあ…」 笑っていた口元が、苦々し気に歪んだ。 「俺が池袋あがって、歌舞伎町に来たもんだからもう関係ねえとでも言うみたいにシカトこきやがって…冗談じゃねえよ、リサが、もう子供生まれそうだってのに。店の為にやったのによお…辞めたら知らねえは無いじゃんな」 でしょ?と海に同意を求めてきたが、勿論海からの同意は無く、静かに睨みつけられた。 「バックレても、あいつら4人でいるから絶対ネットの掲示板とか…ホスラブに書き込むし、店来るかもだし、カブサクに相談したやつまでいたじゃん。子供のDNA鑑定されたら、俺のホスト人生終わりじゃん。だから、何回かパケ【薬物】買って仲良かったナイジェリア人に相談したら、引き受けてくれてさあ、金はめっちゃかかったけど、赤ん坊の始末もあったからしょうがないかあって。あ、なんかどっかの山に埋めたらしいよ」 どこまでも自分勝手な主張に、海の腸はとうに煮えくりかえっていたが、最後まで聞きださなければと、自制を続ける。 「見せしめだろ?」 「……」 無言のまま、目が見開いた 「君が妊娠させたのは…その疑いがあるのはリサちゃんだけじゃない。歌舞伎町に来て、妊娠させて、里子に出すって言って…その子たちが、警察に訴え出ないように、彼女たちを口封じと見せしめで殺したんだ」 「……」 「そうだろルキ君」 「……」 男は、ははっと空笑いをした いつの間にか、暗闇に慣れた海の目に、黒髪のセンターパーツと赤い唇が映る。 「いや、蓮」 真っ赤な口元が にたあと笑った まるで悪魔のように  
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加