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歓楽街
歓楽街付近のとあるカフェテリアにて。窓際の席に座った冬華は、注文したカフェラテを片手に疲れを癒していた。数分前まで満員電車に詰め込まれ、小一時間電車に揺られ続けた冬華の体は休息を求めている。
(近くにカフェがあって助かった…)
元来、人混みが苦手な冬華にとっては満員電車など耐え難い苦痛以外の何物でもない。本来の目的を達成する前に疲労困憊となった冬華は、カフェラテを飲みながら時刻を確認した。現在時刻、午後の五時。
約束の時間までまだ九時間ある。このカフェテリアは午後十一時まで営業しているらしいが、それでも残り三時間をどこかで潰さなくてはならない。冬華は携帯端末を操作して付近の地図を表示させたが、午後十一時以降も営業している店など歓楽街以外には見つからなかった。
だが歓楽街で時間を潰すのは却下だ。歓楽街付近は、帝国内でも治安が悪いことで有名な場所である。暇潰し目的で立ち入るべき所ではない。
(仕方ない…少し早く行ってればいいか)
幸いにも、待ち合わせ場所は詳しく指定されている。歓楽街では、門は入口付近にしか設置されていない。すれ違いは有り得ないだろう。
冬華はそう結論付けると、携帯端末で電子書籍を読みながら読書という名の暇潰しを開始した。
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