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5章 バレー
――私は中学時代、バレー部だった。でも、挫折した。
身長は160センチ足らず。女子としては普通の高さだと思うが、バレーでは低い方で、どんなに高く跳んでも、動きを読まれてしまったら背の高いブロックに阻まれる。何度も相手チームのブロックに止められるうち、目の前に立ちはだかる壁が怖くなってしまった。
不調になると、パスは回ってこなくなった。それはたぶん、周りのメンバーの気遣いだったのだと思うけれども、今の私に点を取るのは無理だと言われているようで、辛かった。
小さくても、高く跳んだり、素早く移動したり、何か別の武器があれば違ったかもしれない。でも私はそれを磨くだけの向上心は、持てなかった。
もう高校ではバレーをやらないと決めた。好きだったはずのバレーが、楽しくなくなってしまったから。楽しめないのに続けるのは、意味がないと思った。
別に将来バレーの選手になりたいわけではないし。夏休みだって部活がなければ時間はたくさんできる。もっと他の何かに費やせる。そういう生き方だっていいじゃないか。
そう思っていた。
だから、彼が自分とさほど変わらない身長で、他のメンバーに引けを取らずバスケをやっている姿に感動した。どんなパスも受け取り、マークも振り解き、素早く走って、高く跳んで、あっという間にゴールする。
たった160センチちょっとの彼の背中が、とても大きく見えたのだ。
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