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  「辿り着いた場所で待っていたのはもう一人の自分だった」  という作り話みたいなことが実際に起こった。    辿り着いたのは出口の見えない砂地。間違えて迷い込んだようなものだったが、そこを抜けだしたいまは清々しい気分であの空間も悪くなかったとさえ思っている。  砂地に辿り着く前はずっと一人で生きてきたが、それはもう終わりだ。今更な気もするが人として人をもう少し大切にすることに決めた。  改心したようなものだ。俺は起こったことを記憶しても深くは気に止めない性質だが、今回のことはしっかりと覚えていたい。もう一度歩き出す前に改めて起こったことを振り返ることにした。
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