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夜間の病院と言えど、職業柄、正面玄関は目立つ。 申し訳ない気持ちのまま、タクシーのおじさんに裏口に回ってもらうように告げ、シュウくんの折り返しに着信を入れた。 少し遅れて、小さな音を立てながらメッセージが届く。 そのLINEメッセージを頼りに、暗い廊下を足音なく進む。 いくつかの部屋を通りすぎて、前方にぼんやりと浮かぶ人影に驚き、肩を震わせていたら、小走りにその人影がゆっくりと近付いて来た。 ようやく認識できる表情。 見知った顔に、ホッと息を吐き出す。 「収録、お疲れ様」 「お疲れ」 シュウくんの表情は、思いの外落ち着いている。電話口では、酷く慌てていたのに。 シュウくんのその表情に、自分も安心したのか、病院に着くまでずっと握っていた手のひらをようやく開放した。 滲んだ手汗が通り抜ける隙間風に、少しだけ冷えた気がした。 「こっち」 シュウくんが振り向きながら指先で指し示す。 薄暗い廊下を少し進んで、何の表札もない個室らしき扉を開くシュウくん。 開いたはずの手のひらを無意識にまた、握り込んでしまった。 色んな最悪を想像して、キュッと息が詰まる。 ぼんやりと淡いライトの下で、至極彫刻のような…高価な美術品のような… そんな彼奴がジッと横たわっていた。 ゴクッと喉を鳴らして息を整える。 色々な覚悟を決めてそっと覗き込んだ顔は、静かに寝息を立てていた。
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