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『ホーンテッド・マンション』
分かりやすいネーミングのアトラクション。
つまりはオバケ屋敷。
キャストを募集していると知って、私は思いきって応募してみた。
応募しておいてなんだけど、実は少し前までオバケや幽霊が大の苦手だった。
急に出てきたり、宙に浮いていたり、うすら笑いを浮かべていたりと、どうあっても好きになれる要素がなかったのだ。
オバケなんてこの世からいなくなればいいのに、なんて思ってた。
それがいつの間にか、特に怖いと感じることがなくなっていた。
理由は分からない。
ただ不思議なことに愛着というか、よく考えるとかわいらしいなと思えるようになっていた。
「ここが待機所。お客さんが近づいてきたらあのランプが点滅するから、タイミングを計って飛び出すんだ」
沼井さんに施設を案内してもらう。
裏側ってこんなふうになってるんだ……。
見回っているとお客さんが通るところは施設全体のほんの一部なんだと気付く。
「――と、まあこんな具合だね」
ひととおり案内されたところで面接室に戻ってきた。
「何か質問はあるかな?」
「そういえば他のスタッフさんを見ていないのですが……」
「今日は休演日だからね」
「あ、そうでしたね……」
「さて、さっそく明日から現場に就いてほしいと思うんだけど、どうかな?」
「はい、よろしくお願いします」
本当は二次面接や適性検査があるらしいんだけど、よほど人手が足りないのか即採用された。
「指導役の大矢さんには連絡をしてあるから、仕事のことは彼から教えてもらうといいよ」
「はい、分かりました」
こうして私の新たな生活が始まった。
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