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景色を見ている内にウトウトとしていた美来を起こして目的の場所に降り立つ。
「ここって……高原?」
「正解。高原の夏は涼しいって聞いてたけど、本当なんだな」
「本当に過ごしやすそう」
自然に囲まれた場所で気持ちよさそうに風を感じている横顔が、可愛いというよりちょっと大人びて見える。女の子ではなく女性という感じで、今まであんまり見た事のない美来の姿だ。
「隆司君どうかした?」
「ちょっと美来に見惚れてただけだよ。綺麗だなって」
「え?綺麗って……」
いつも可愛いしか言わないからか、綺麗という言葉にいつも以上に照れている。その姿は今すぐここで抱き締めたいぐらい可愛い。でも我慢だ。
「宿泊先に行く前に、美来を連れて行きたい所があるんだ」
「連れて行きたい所?」
「うん。きっと美来が喜ぶ所」
駅と宿泊先の丁度中間辺りにあるその場所まで、徒歩で約10分。この気候なら俺は大丈夫だけど、美来は大丈夫かな。
「10分ぐらい歩くんだけど平気?」
「うん。全然大丈夫だよ」
「じゃあ、手繋いで歩いて行こう」
2人分の荷物を持つのと反対の手で、もう一度しっかりと手を繋ぎ直す。
彼女がどんな反応をしてくれるのか……喜んでくれるとは思っていても、ちょっとドキドキしながら見慣れない景色の中を歩き始めた。
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