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俟ちかねていたドアの音が聞こえてきてホッとしながら入り口を見る。女の子だから長いだろうとは思っていたけど、30分以上になると流石にちょっと心配だった。
「おかえり。ゆっくりでき……た……」
「ごめんね、ちょっと長くなっちゃったかも。お腹空いてない?」
「……」
「……?隆司君?」
「えっ?!あ、いや……うん。お腹はまだ大丈夫だけど、そろそろいい時間だし、料理仕上げようか」
「そっちキッチンじゃないよ……?」
「……あ」
やばい。美来のお風呂上りの破壊力が高すぎる。ちょっとドキドキし過ぎて落ち着かないかも。何でこうなるって俺さっき気付かなかったんだろう……
俺を見た美来の反応がやっと今理解出来た。私服では見たことないラフな姿が逆に可愛すぎて新鮮で、ちょっと直視出来ない。
「どうしたの?何か様子が変だよ?涼しい場所だけど、やっぱり夏だから外歩き回ってばてちゃったのかな……料理は私がしておくから、隆司君はゆっくり休んでおいた方が……」
「大丈夫大丈夫。そういうのじゃないから」
「本当に?」
「うん。……さっきの美来と一緒で、お風呂上がりの姿が見慣れないのと可愛過ぎるのとで、ちょっと照れてるだけだから」
「え」
目をパチパチとした後、美来まで照れ始めてしまった。
「……なんかやっぱり、見慣れない姿だとちょっと照れちゃうよね」
「うん。……でもさ、これからはこういうのも普通になっていくんだろうね」
家族ぐらいしか知らない姿でも、これからどんどんお互いに知って2人の間でも当たり前になっていくんだろうな。美来が可愛いのは既に当たり前だけど。
「料理、始めようか」
「……うん!」
「俺は何したらいい?」
「じゃあ、これをフライパンで炒めてくれる?」
「分かった」
狭くはないキッチンなのに、なんとなくお互い近付いたまま。並んで料理をしながら、会話をして笑い合って……俺と美来の間には凄く穏やかで幸せな時間が流れていた。
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