19話

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19話

「ごちそうさまでした。凄く美味しかった」 「そう言ってもらえて良かった。それにしても……凄いね、隆司君。あんなにあったのに全部食べちゃうなんて」 空になった器を見ながら驚いている彼女に笑顔を返す。 確かに自分でもよく食べきれたなと思う。買った食材が多すぎたのか、作ってる内に明らかに2人分じゃない量が出来上がっていたからな。でも美来の手料理を残すなんて出来るわけがないし、本当に美味しかったからどれだけでも食べれそうな感じだった。 「無理して食べたんじゃない?」 「そんな事ないよ。俺、美来の料理なら幾らでも食べられるみたいだし」 「でも今度作る時はもう少し量を加減するね。――そう言えば、折角お酒買ったのに飲まないの?」 「ゆっくりしながら美来と飲もうと思ってさ。ソファーに移動しよう」 「じゃあ、グラスとお酒持って来るね。隆司君先にソファー行ってていいよ」 「俺も一緒に行く。両方一度に持って来るの大変だろうし」 「ありがとう」 食べ終わった食器を2人でササっと片付けた後、お酒と一緒に買ってきたスナック菓子も用意してソファーに並んで座る。 アルコール度数の強くない甘そうなチューハイをグラスに入れて彼女に渡すと、代わりに俺の手元にはビールが注がれたグラスが来た。どちらもご当地限定で、2人とも興味津々で買ったお酒。 「どんな味なんだろう。飲むの楽しみだね」 「美来はあんまり飲み過ぎないようにね。じゃあ――乾杯」 カチンという音が響いた後、2人で同時にグラスに口を付ける。 俺も普段からお酒を飲むわけじゃないしビールが特別好きでもないけど、これは凄く飲みやすい。 「――美味しい。このチューハイ甘くて飲みやすい」 「こっちのビールも飲みやすい方だと思う」 「買って正解だったね。地域限定の物って何でこんなにワクワクするんだろう」 「旅行の醍醐味ってやつなんだろうな、そういうのが」 それを最大限に楽しむためには、俺の隣には美来が必要だけど。
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