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お互いに一口ずつ飲み比べたりお菓子をつまんだりして一杯目のグラスが空になった頃、彼女の様子に少し変化がある事に気付いた。
「美来、顔赤くなってない?」
「んー……そう言われてみれば、ちょっと顔が熱いような……?」
「もうこれぐらいにしとこうか」
「でも、まだ少し残ってるのに……」
「気にいったんなら、また帰りに買って帰ろう。片付けて来るから待ってて」
「うん」
いつもとは違うふにゃっとした笑顔。まだ完全に酔ってるわけではないみたいだしこれはこれで凄く可愛いけど、これ以上は無理そうだ。
「――お待たせ。寝室行こうか」
「もう寝るの?」
「まだ寝ないよ。見せたい物があるんだ。そろそろいい時間だと思うから」
「見せたい物?」
「うん。ほら、おいで」
ソファーから立たせてあげた後、そのまま手を繋いで寝室へと向かう。
ここに着いた時にコテージの中を見て回ったけど、多分美来はあれに気付いてないと思う。そもそもベッドに横にならないと気付かないだろうし。
寝室に着いてすぐ、グルっと部屋を見渡した美来が首を捻っている。きっと昼間と何も変わり無いことを不思議に思ってるんだろうな。
「美来、ベッドに横になってみて」
「ベッドに?」
「うん。そうしたらきっと何か分かるよ」
半信半疑な表情でダブルベッドに横になると、美来がすぐに飛び起きる。
「天井がガラスになってる……!」
驚いている美来の頭を一撫でして隣に寝転がると、それを見て彼女ももう一度横になった。
「おお……綺麗に見える」
「見せたい物ってこれだったんだ……」
「前に晶からここの事を聞いたの思い出してさ。誕生日に連れてきてあげたかったんだ」
「こんなに素敵な誕生日プレゼント貰えて、凄く嬉しいよ……ありがとう、隆司君」
喜んでくれて良かった。美来が喜んでくれるのが俺にとって一番嬉しい。
「綺麗だね……今の時期なら、もしかしたら流れ星も見えるかも」
「見れたらいいな」
「もし流れ星が見えたら何お願いする?」
「ああ、3回願い事をするってやつ?そんなの1つしかないよ。俺の願い事は、美来とずっと一緒にいられることだから」
「うん……私も同じ」
「……ねえ美来、もっとこっち来て」
少し端よりだったのを引き寄せて横向きで抱き締める。
「あのさ……覚悟は出来てるって言ってたの、今も変わってない?」
「……うん」
「じゃあ、キスしてもいい?一回したら本当にその先まで進んじゃうと思うけど……」
「……うん。大丈夫」
その返事を聞いて、抱きしめていた体を見下ろす様に体勢を変える。確認したせいか、緊張で少し体が強張っているのが分かった。
「……もしどうしても無理になったら、早めに教えて」
本当に止まれない所まで行ったら、美来が何を言ってもやめてあげられないかもしれない。
「うん、分かった」
「俺も初めてだし、正直絶対痛くしないとは約束出来ないけど……なるべく優しくするから」
頬を撫でながらゆっくり顔を近付ける。今日初めての彼女とのキスは、甘い味がした。
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