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「高校生の時は友達になりたかった。だが大学になり同じサークルに入ってから楽しそうに語る姿を見て、心が温かくなって俺まで楽しかった」
「こんな地味な男をか?」
綺麗だったり可愛かったりするのならわかるのに。
「映画を見ている森村は表情が豊かで可愛いぞ」
「なっ」
再び視線が合う。先ほどよりも近い距離で、しかも可愛いといわれて照れてしまった。
「馬鹿なことをいうなよ」
「本当だ。俺はこれから先も一緒に映画を見て、表情をころころと変える姿を隣で見たい」
モテ男が必死になって地味な男の気を引こうとする。
友達のポジションを手に入れるまで頑張ったのだから、恋人のポジションも手に入れることしか考えていないのだろう。
「はは、お前は諦めなさそうだな」
「あぁ。OKの返事を貰うまではな」
「一択じゃん」
今はまだその一択すら答えられない。だが心には届いた。睦月の想いが。
「しょうがないな。しばらくの間は彼女が欲しいと言わない。男二人で映画鑑賞を楽しむとするよ」
「すぐに俺がいいと言わせてみせるよ」
「おー、がんばれー」
「このやろう。俺の本気を見せてやるから覚悟しろよ」
肩をつかまれたままだったので簡単にソファーに押し倒されてしまった。
その時に見せた男らしい表情に、何故か胸が小さく跳ねた。
これから先に待っているのは友として傍にいる自分なのか、恋人としての自分なのか。
まだ先のことはわからないけれど、何かが始まりそうな予感がした。
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