苦手な男に誘われる

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 良い席はすぐに予約が埋まってしまう。どうせならいい席で見たいと思っていたので正直いってこのチケットが欲しい。  だが相手が睦月だと思うと素直になれなかった。 「女子と行けよ。喜んで誘いを受けるだろうし」 「この作品は俺も好きなんだ。だから森村と見たい。サークルの時のように感想会をやろう」  映画を見に行った日はファミレスで食事をしながら映画の感想会をしていた。  女に囲まれていていけ好かない奴、妬みから男たちには目の敵にされていたのに、映画に対して熱い男だとわかると仲間たちは彼を受け入れた。確かに話し合うと面白いがそれでも苦手意識があって距離を縮めることはなかった。 「そんなに嫌か?」  顔に出ていたのだろうか。 「え、いや、別に、そんなことは……」  と誤魔化す。 「良かった」 「チケット、無駄にならなくて済んだ」  はねつけていたらそうなっていたのか。 「勿体ないだろう」  さすがに映画好きとしてはチケットを無駄にするのは嫌だ。 「よし、映画のために仕事を終わらせるぞ」  拳を握りしめる睦月は機嫌がいい。今まで誘いを断り続けた同僚がチケットを受け取ったからか。  映画は楽しみだが相手が睦月だと思うと同じテンションには到底なれなかった。
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