5. 樹の海の底で

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ボクは嫌われ者デス。 楽しい事は好き、楽しいから。 綺麗なものは好き、感動するから。 素敵なものは好き、素敵だから。 ボクは生まれた頃から何故か周りに距離を取られて生きてきたのデス。 何故だかは、小さい頃は理解出来なくって何度も何度も悩んでは苦しくて泣いてしまったけれど、今ではそれも理解出来るほど大人になりまシタ。 容姿…デス。ボクの見た目は自分でもお世辞にも美しいとは言えまセン。ギョロりとした目玉に、身の毛もよだつ様な牙を覗かせた大きな口で、爪は鋭く、足なんて太すぎマス。全身は毛だらけで、色んな場所に毛玉が出来てしまってマス。 ボクには、親がいまセン。 生まれたのがいつなのか、どうやって此処へ来たのかは全く覚えがないのデス。でもボクは親がいない事が最近、親子の旅人を見るまで知りませんでシタし、人は一人で生きていくものなのだと思ってまシタ。 でも、この考えはすぐに間違いだったのだと気づくのデス。 ボクがボクの姿があまり良くなく、人に怖がられてしまうと気づいた頃に、人はボクを見るなり叫んだのデス。 「ばっ、化けもの!!!!」 最初は褒め言葉だと思ってまシタ。言葉を知らないボクですから、物事をどうしたって良い方に考えてはしまうのデス。 ボクはその時嬉しくて、褒められたことに少し調子に乗ってしまい、そう言ってくれた人間にお礼の品としていつも作っている木の実のネックレスを差し上げようとしたのデス。 でも、すぐにそれが間違いだったのだと、またまた気付かされたのデス。 人間は、ボクに銃を向け、それを撃ち始めまシタ。何度も何度も体中が痛み、泣いてしまうなんて程じゃないくらいの悲しみと怒りがこみ上げまシタ。 痛い痛いと叫んでも、彼等は聞いてくれまセン。 その日は泣きながら、苦痛に耐えながらだったのでハッキリとは覚えていまセンが、翌日に鈍痛に目が覚めた際、いつも寝ている寝床にいたので帰れたことを悟りまシタ。 ……ボクは涙が止まりませんでシタ。
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