2. 駄菓子屋のチューペット

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なんだか、今日は喪失感がすごい。 そんな時に、ふと冷たい何かを手で触ったのに驚いて思わずそれを見てみると、何やら白いビニール袋が水滴をたくさんつけて、壁の取っ手に下げられていた。 なんだ、これ。 ふと、恐る恐るそれを手にとって慎重に眼で中身を確認できる位置まで持ってくる。 中身がヤバイ薬だったらいやだし、爆発なんてしちゃ僕の人生も終わっちゃう。 それでも好奇心には勝てずにそっと中身を見てみると、どうやらそこには大量のドライアイスが入れていたらしく、白い奇妙な煙を放ちながら、この時期には似合わないヒンヤリとした風を僕の首元に広げてくれた。 「ニャー」 「え、中身見るの?でも、僕知らない人と荷物を触っちゃいけないって言われてるしなぁ」 そんな臆病な僕を見てあきれでもしたのか、少しだるそうなままの三毛猫は僕の手に持つビニール袋を先ほど扉にしていたみたいに猫パンチして、僕の手の中から地面へと打ち付けた。 あ!と思った時にはもう中身がアスファルトの地面に晒されていて。 暑い外の空気に勢いよく熱せられたおかげでどんどん溶けていくドライアイスの中に、なぜか一つのものが混ざりこんでいた。 「これ・・・」 あの日食べた、僕のアイスだ。 そっと拾い上げると少し溶けているのが、中身がぐにゃぐにゃしてる。 奇妙に思いそれを拾い上げると一枚紙がくっついていて、それも同じように恐る恐る広げると。 独特の、お年寄りの字で書いてあった。 “「いつも、ありがとうね」" ばーさんだった。 ばーさんが、僕へ手紙をくれたのだ。 買えなかったアイスクリームとともに。
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