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「・・・本当に、独特な子だったんだね。」
「ええ、本当に」
ライターがペンを走らせながら、少しだけ泳いだ目を隠すように視線を落とす。興味本位で、失踪事件のことを聞きに来たんだろうけれど、話を聞くにつれて妙な気持ちになるのは僕にも理解できる。
それほど、小金井くんは“普通”とはかけ離れていた。
「それで。君が彼が“いなくなった”と認識したのはいつ頃なの?」
ある程度走らせたペンを人差し指と中指の間に挟んでペン回しのような動きをしながら、ライターはそう続けた。
口を閉じた僕の口がまた開くのを待つように。
ペン回し・・・そういえば、小金井くんもよくやっていたな。
小金井くんは不器用と言えば不器用で、器用と言えば特別器用な人だった。
野球やサッカーのようなルールや決まり事のあるものは理解できなくとも、ペン回しや小石投げなんて単純なものに関しては出来るを超えるくらい出来た。
クルックルってペンが回る。
夕方、誰もいなくなった教室で2人。日直の仕事をこなす僕の向かいの席に背もたれを前に向きを変えて腰掛けながら回す。
時間を潰すような、それで持って潰す時間を楽しむような。
小金井くんはよく笑っていた。
「小金井くん、あの日僕に言ったんです。」
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