21. 人間マガイモノ

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そんないつもと変わらない夕方、ペン回しをしながら視線をこちらに向けた小金井くんの表情はいつもと違わない笑顔。 いつまでも仕事が終わらない僕を見かねたのかと思い、「あと少しで終わるよ」と声をかけようとした時。 そんな言葉を遮るように話し始めた。 「堺、オレ、引っ越しする」 「え・・・?」 突然の引っ越し宣言。 唐突の言葉に僕は思わず顔を上げた。 変わらない笑顔のままの小金井くんに、せっかく仲良くなれたのに・・・だとか、新しい環境で小金井くんに友達は出来るのかな。だとか。 失礼にも似た感情のまま、彼の言葉を聞くだけ。 大した反応もできない僕に、小金井くんは笑顔のまま続けた。 「オレ、堺、好きだ。」 「・・・僕も小金井くん好きだよ。せっかく仲良くなれたし、楽しかった。引っ越しってどこに行くの?した後も会える距離?」 「会える。すぐ、会える。」 「本当?良かった・・・。じゃあさ、引っ越したら新しい住所教えてよ。あと電話番号!電話するから・・・」 小金井くんの言葉に安心して、引き出しの中からノートを取り出して端を破った。 引っ越し先の住所、電話番号を聞こうと思ったから。 そうしてペンを握った時、小金井くんに新しい住所や電話番号が覚えられるのかな?と疑問に思った。彼のことだ、きっとわからないって笑うんだろう。 日直の仕事もあと少しで終わるし、彼を家に送りがてら彼の母親にでも聞いてみようか。 近所の学校なら、校外活動で会えたりするかな。あ、放課後に待ち合わせて遊びに行けるかも。学校生活を一緒に送れないのは寂しいけれど、会える距離なら大丈夫。 また遊べる。 そう思って、小金井くんに「住所わかる?」と聞こうとした時。 彼の笑顔が消えた。 「堺、ごめん」 ーーー泣きそうな顔して。
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