3. 望遠鏡の君

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  星には興味はなかった。 知識もなかったし、空も知らないし、くだらない勉強しかしてこなかったから。 オリオン座がどこにあるのかもわからない程度の知識で。 興味がある。何て言ってしまったことを後悔しているころには、もうすでに彼女の手のひらの中。 「西、星をみよう!」 それから毎日。 クラスごとにホームルームにかかる時間も違うような中、決まっていつも彼女はタイミングよく僕のクラスに表れる。 「・・・・西!」 そそくさと影を薄くして、こっそり出ていこうとしてもダメ。 「じゃあ、塾に行く時間まで!」 予定があるふりをしても。 「もちろん、天気予報は確認済み!今日は良く星が見える日だよ」 天気予報は誤報に出来ず。 何度も断れない僕は、いつしか君が迎えにくることが当たり前になって。 あんなに興味がなかった星に向き合う日々が。 いつしか僕の中心になっていく。 「西!今日は見える!これは逃せないよ!」 嬉しそうに笑う君に。 「楽しみだね」 心地よさを感じてしまうには、そう時間はかからなかった。
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