3. 望遠鏡の君

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  ーーああ、もう決めたことなんだ。 回らない頭と真っ白になった息が交差するとき。僕の空の上は真っ暗になった。 星が輝いていたけれど、そんなものはもう目に入らなくって。 止められない関係の僕が、止めたい君に手を伸ばす。 それでも先を見た彼女の目は星なんかよりずっと輝いていて。 「西、本当にありがとう」 ーー夢が決まったよ、おかげで。 微笑む君の腕の中でゆらゆら揺れるいつかの贈り物が、僕にささって離れない。 やめてくれ、もうやめてくれ。 コートのポケットに入れた手が震えた。こうなるともう寒さなのか、後悔なのか僕にもわからないほどに。 君のために贈ったそれが、君の背中を押した。 「・・・うん」 絞りだしたその言葉が君に届かないことを祈った。
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