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ギロりと鋭い眼差しが、固唾を飲み込んで見上げる幾人もの目を見る。
その目は民には恐怖の象徴だった。
ああいう目をする王様は罪人に処罰を与えたり、自分の身に危険が起きた時、敵を一網打尽にするような時、そんな時に見せるもの。
だから今日は何か何かと民は恐れながらも、その光景を見上げる。
「ただ、一つ言っておこう。どんな喜劇にも悲劇は隠れているのだ。悪人はいる、悪人になるべく成った者達だ。シナリオを肯定するなら、人生に抗えない悪人を哀れむものもいるだろうが、それは必要ない。悪人に優しくし悪事を見逃していては、悪人の見せ場を奪う事にもなる。」
「……それでは悪人は、悪人のままなのでしょうか!」
気がつくと僕は叫んでいた。
王様の耳に聞こえるように、普段出さないほど声を張り上げて。
途端に皆の視線がこちらへ向くが、皆が皆心底驚いた顔しては次の瞬間に青ざめた顔になる。
王様の演説に耳を挟むことは暗黙の了解で禁止とされており、気丈激しい王様の事だからとんでもないバツが下されるのだと怯えているのだ。
僕はなぜ叫んだのか、なんで声を出したのかもわからないままで。小刻みに震えだした両手をきつく握りしめて、ガクガクと奥歯を鳴らせて王様の次の言葉に耳を傾けるしかなかった。
嗚呼、ここで処罰されるのも人生なのか。
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