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すると王様は僕をギロりと目で捉えて
「少年、悪人は幾何時も悪人ではない。悪さをしていればそうではあるが、食事をする時、寝てる時は俺らと変わらぬ人間なのだ。悪人は悪人であるが、悪人から足を洗い善人になるチャンスも待っている。」
「…!」
「納得したか?」
「はっ、はいっ!!!」
震えた声でそう返事をした時、王様はその目を民衆へと戻した。
そして続ける。
処罰をされなかった安心感で僕が別の意味で泣きそうになっている時、彼は初めて優しげな顔で口を開いた。
「人生は喜劇である、そう言ったが。何も重く考えなくても良いのだ。何か不幸があれば最初から決まっていた事だと早々に諦め、次に進めば良い。喜劇には悲劇が隠れているが、悲劇続きではない。それだけは覚えておけ」
そんな王様の珍しい様子に皆が驚いている時、王様は王冠をそっと塀に置いた。
その行動の意味を知らなかったけれど、周りの皆は感動した様子で涙目になりながら拍手を送る。
いつまでも鳴り止まないその民衆の音に、王様は優しい顔からいつもの顔へ戻り、僕らを見下ろす。
消えそうな声で。
「どうにもならないことも、あるけどな」
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