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不審に思ったのは最初だけで、この人はその後も最近の軽い男の人とは違いすぐに連絡先を聞いたりしてこないし、無理に降ろそうともしない。
私は特に欲してはいなかったけれど、この人は話し相手を欲していたのかなと、そういう印象を受けた。
「貴方は?」
「そんな大層なもんじゃないですよ。僕は現実を受け入れられなくなったんです、おかしな話と取られても仕方が無いほど、滑稽なことで」
「現実…」
「行ける世界と行けない世界がこの世に存在すると、そういう摂理で出来ているんだと。僕の頭のネジはグルグルに外れてしまっているんで。それに気付かず気づいて知らないふりをしている自分に限界が来まして。こうして癒されに?きた次第です。」
「へえ」
「存外、対して興味もないですよねえ」
「まあ、特には」
笑った。
苦しそうに、けれど何処か諦めたように。
笑う顔はどこか、クシャクシャに丸めた紙切れに似ていると思うんだ。笑う事でできる顔のシワのそれにも似ているけれど、どこか乾いたそんな印象を受けるから。
紙を丸めて投げた先に、何かあるんだろうか。
笑った先に、何があって、何を得るのかな。
我ながら子供じみたなんて奥のない浅い考えだと思う。これだから“意識高い系”とか言われてしまうんだろう、学習も出来ない。
孤独には慣れてるけれど、別段好きではないのだから。協調性を学べと親によく言われたなぁ。
ペラペラと口を動かす隣の人の言葉を放り投げながら、ぼうっと窓の向こうの空を見つめていると、うっすらうっすらと星が見える。
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