8. 拝啓、電車の隣人さん

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馬鹿みたいな、そんな文字や言葉がまるでパソコンに文字を入力する時みたいにカチカチっと音を立てて移動していく。 私の頭は空だけど、なにも入ってないわけじゃない。 カラだけど、ソラと同じ。 あ、今すっごい恥ずかしいこと言ったなぁ。 「人に無理に好かれなくても良いんじゃないかな」 「え?」 「誰かに好かれないと自分を認められないのなら、自分が好いてあげればいい。自分は自分の最大の理解者ですから。むしろ僕だって君のことは好きですよ、あ、勿論ライクですからね。通報しないでオジサン泣いちゃう。」 「それ、何かの本で読みましたよ、受け売りですか。というよりそっちこそ泣かないでください、通報しないですよ、ほら鼻水きったないんだから」  そっと差し出そうとしてたハンカチを人差し指と親指で丁寧に挟んで手渡そうとすると、それまたその行為を見てかその人はワンワン泣き出す。 面倒くさいけれど、面倒くさいけれど…。 こういうのは本当に久しぶりだ。 思うままの言葉で感じたままの表情で、誰かとこうして中身をさらけ出して話したりするのは。誰かに嫌われてもいいやと諦めでは無いそれで。
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