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「僕は君と一緒に行きたいよ、光の向こうへ歩いていきたい」
「我が儘は言わないの、私は一緒にはいけないよ」
「………ごめん、ごめんね」
「謝らない」
「………ありがとう、好きだよ。大好きだ、愛してるよ、君の事を忘れる事なんてしないし、僕のお嫁さんは君だけだ」
「……ありがとう、私もだよ。ありがとう、ありがとう…」
涙でぐしゃぐしゃな顔で、最後くらいはと無理やり口角を上げて彼女に叫ぶ。
掠れた、空気の漏れた言葉がガラスを通り抜けて、彼女へ向かった。
僕の届かない掌の代わりに。
僕の涙が手の甲にベタベタにくっつく頃、彼女も目を濡らして無理に笑ったとき、涙が零れだした。
そして、光に包まれる。
頭ですぐに時間が来たんだと気づいた時、互いに僕らはガラスに両手をついて額をくっつけあって突然来る別れにすがりついた。
けれど、もう、行かなければならない。
「元気で」
「元気で」
「何十年かしたら行くから」
「うん」
「また会えたら、今度は手を繋ごう」
「待ってる…!」
彼女の変わらない笑顔は、眩しいほどの光の中に薄らと消えていった。
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