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「・・・なんで」
いつも通り、もう一年も続けた、僕の駄菓子屋通い。
今日も変わらずそうしようとしたんだけれど。
何も考えずに入ろうとそっと扉を見ると、閉められたままで。
もともと薄暗かった店内の照明も、ハッキリとおかしいってわかるくらい真っ暗。まっくろくろすけ出てくるんじゃないかなってくらい、真っ暗で。
「そんなぁ・・・」
扉を見上げた先に、貼り付けられた現実は。
“「店主、急病につき。誠に勝手ながら閉店しました。」"なんて文字。
ひどいよ、ひどすぎだよ。
僕昨日だって行ったのに、昨日だってここのベンチでチューペット食べたのに。
昨日は閉店するなんてそんなこと一言も言ってなかったじゃないか。閉店のへの字だって言ってなかったのに、なんだよ!勝手だよ!
うっすらと浮かび上がった涙目に、なんだか情けない声だって自然と出てきてしまう。
まだ、買いたいものあったのに。
あの日食べたアイスクリームだってまだ買えてないのに。
僕は意地悪な兄にゲーム機を取られた時以上の絶望感と、なぜだかそこまでアイスクリームが好きじゃないのにどんどんアイスへの欲が募るばかりで。
なんだか、これじゃあ損だけしたみたいじゃないか。
「ニャー」
ふと突然聞こえたその声に驚いて下を見てみれば、扉の張り紙に手が届かないほど背の低い僕よりもずっと低い位置でこちらを見上げてる、あの三毛猫がいた。
ばーさんに飼われていたわけじゃなかったのか、首輪もつけてないその三毛猫は、どうやら僕が扉を開けてくれると勘違いしてるのか、そのふわふわの前足で何度も扉に猫パンチしてる。
僕だって開けたいさ、アイス食べたいもん。
でもどうやら、少し時間がたって僕が使えないと知った途端に興味無さ気にぷいっと違う方向を向いてしまった。
でも、店の前からいなくなる気はないらしい。
「お前も悲しいんだね」
「ニャー」
「僕も悲しいよ」
僕も錆びたベンチに、今日はチューペットを持たずに座れば、猫もマネするように隣に腰かけてだるそうにしてる。
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