白い孤独

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 草むらの向こうには古いキリスト教会があり、教会の裏には海岸へ降りる細い急な階段があった。そこまで走って行くと、子猫はもう下の砂浜まで降りてしまっていた。  僕は階段を駆け下りる途中で、子猫が何かを見つけてジーッとしている姿を確認した。少し安心して、静かに子猫の近くまで行くと、子猫が見ているモノが何かわかりギョッとした。  猫の死骸だった。  子猫はそれが自分と同類であることを感じたのか、何に戸惑っているのか、ジッと動かず固まっていた。    子猫には厳粛に死を受け止める神経があるのだろうか。野性の鋭利な感覚は何か人間の知らない波動で死の畏怖を学ぶのだろうか。  そんなことを考えながら子猫を見ていると、子猫は小さな声で 『みぃぃ』 と鳴いた。  僕は子猫に呼ばれたのだと思い、子猫を抱き上げた。  子猫は安心したように僕の腕の中に抱かれて少し震えたけれど、やがて震えも止まり目を閉じた。真っ白な子猫は、あまりにも小さく軽く、この小さなぬくもりが一つの命であるということが不思議だった。  子猫の飼い主の女の人が、いつの間にか僕の後ろにいて 「あげましょうか?」 と言った。 「えっ?!」  僕は、その言葉に深い悲しみを覚えた。命を・・・あげる・・・なんて言っちゃいけないと思ったんだ。命って・・・そんな簡単に・・・人にあげたりできるものじゃないと思ったんだ。
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