白い孤独

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 中学3年の夏休み。    僕は、ばあちゃんの家で過ごした。  僕の家は山奥の小さな村にある。ばあちゃんは、とある地方都市のマンションで暮らしている。僕は、その地方都市にある塾の夏期講習を受けるため、ばあちゃんの家から塾に通うことになった。  本当は夏期講習なんて気乗りしなかった。勉強がイヤな訳じゃない。一人で勉強するのは他の何をしている時間より気楽でホッとするくらいだ。だが、僕は知らない人と簡単に仲良くできるタイプじゃない。ばあちゃんにだって、素直に何でも言える訳じゃない。  馴染みのない環境の中で、落ち着いて勉強できる気がしなかった。けれど母さんが勝手に、ばあちゃんと相談して決めてしまった。夏休み、僕が、ばあちゃんの家に泊まり込み、塾の夏期講習を受けることを。 「そのくらいできなきゃ都会の高校へ進学できないでしょ!」 と、まるで当たり前のことみたいに母さんは言った。  僕は今まで一度だって、都会の高校へ進学したいと言った覚えはない。それなのに父さんまで、母さんの言葉にうなずいて 「高校に入れば家からは通えないからな。今から練習しておくのはいいことだ。」 なんて言っている。  僕は母さんの言う通りにするしかないと思った。それが一番、無難だから。反発したところで、何時間も何か説明され、僕が納得してもしなくても、無理矢理でも、母さんの決めた通りに僕が従うまで、母さんは絶対あきらめないと知っているから。
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