【01:夏休み】

4/22
前へ
/342ページ
次へ
01 ///////////////// ドアの向こうで誰かが言い争いをしている。 ――ナ…… それに混じって誰かがぼくを呼んでいる気がする。 誰かの声が聞こえた。 な?  ナーシャ? なに。  誰かの声が、気配がなんだか、すごく懐かしいような。 ……知らない。 屋敷? の中。 知らないのに、知ってる。知ってるのに、知らない。 妙に甘い硝煙の匂い。 砕けた壁の、土と砂埃のにおいがする。 (何処、だっけ。……どうして、此処に、居るんだ?) ──広い庭と、シャンデリア。  薄暗い廊下、背丈の倍ありそうな、大きな棺桶。 そうそう、確か。凄く綺麗だから、ぼくは、あれを、宝箱だと思ってて……     あれ? さみしいんだ。 痛いんだ。 知らないのに。 わからない。何をいってる?  遠くの方にブロンドの女の人が居る。 ぼくは、だって、何か……何だ? あれ? 「知っていて、虐待を売り物にしていたんですよね! 重ねて!! 放映することに意味があったんですよね!?私物みたいに? 勝ちたいからって、そんなことまで曝し者にするんですか。それを好きだからって、どういう神経して――――」 だって、あれは。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加