記憶の糸

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 みんなが頼んだ料理が運ばれて来た。私の前にはサラダスパゲティが置かれる。レタスの上に麺が乗っていてアボカドやきゅうり、トマトなどが色とりどり一番上に乗っている。胃がぐうと動いた。 「あ、藤田さんの美味しそう。この店いいね」  紀恵が言う。確かにコンビニ弁当も飽きているしたまにはいいな。 「紀恵さんは転職しないでしょ」  私はフォークを使いながら訊いてみた。 「うん。今のところは家からも近いし、働きやすい職場だもの。それに富士山がよく見える」  紀恵は旦那が理学療法士だし、生活が安定しているので敢えて転職はしないだろうとはすぐに憶測がついた。私は生活費はぎりぎりだが一応食べてはいけてる。夫が帰って来たら引っ越しか職を変えるかしよう。通勤が大変だ。  みんなが食べ終わった。お昼の一時間は短い。池田がお会計をして外に出る。上を見上げる。夏と秋の間の空だ。  大通りを歩いて会社のあるビルに戻る。私と同じICカードを首に下げている人がたくさんいる。みんなお昼を食べてきたのか。  私が毎日ほとんど変わらない生活をしているのに夫は今頃なにをしているのだろう。運転免許証だって保険証だってないのに普通の生活が出来ているのだろうか。なにか事件に巻き込まれていなければいいけど。
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