殺人

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 事件は三年前に起きた。  当時18歳の無職少年が、数日前街で出会った女子高生姉妹の家へ遊びに行き二人を強姦しようとして、抵抗されたためこれを殺害したというものだ。  一審では罪を認め、自ら死刑を望む発言をしていた被告だったが、二審に入り主任弁護人が柊正芳(ひいらぎまさよし)氏に代わった途端、発言を一転。  殺意や強姦目的を否定し、弁護側もそれに沿った主張を展開していった。  (いわ)く「小学生の時に失った姉恋しさからくる追慕行為が発展したもので、暴行の意図は微塵も存在しなかった」  曰く「被告は幼少時より父親から家庭内暴力を受け、著しい精神的未生育および統合失調症の傾向が顕著である。事件当時も蜘蛛男(本人弁)の指示で姉妹の家へ行ったと証言しており、心神喪失の状態にあったことは疑いようがない」  曰く「被告の知的能力が著しく劣っていることは、裁判の過程を通しても明らかである」  弁護団は、犯行時の被告の精神年齢を11歳程度とし、精神鑑定の結果を提示した上で死刑判決は不当であると力説した。
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