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「ノドが千切れるほどシャウトして。……でも、歌えば歌うほど苦しくなって……自分を救うために始めたライブなのに、逆にもっともっと自分を追い詰める羽目になって」 「……」 「そんな時、長瀬優一の歌詞に出会ったの」  その顔が柔和にほころぶのを反町は見つめた。瞳に星が散っている。 「私のみたいに()き出しじゃなくて、言葉が洗練されていて、それでいて、愛する人を理不尽に奪われた当事者にしか感じられない絶望感や無力感、罪悪感。邪悪な復讐心と後悔の念――その心の流れが怖いくらい見事に表現されていた。もう全身に鳥肌が立って、一人でも多くの人にこの歌を届けたいと思った。まるで何かに取りつかれたように歌い続けたの。呼んでくれるところがあれば、どんな小さな会場にだって駆けつけた」  結衣の瞳が、冬の青空のように澄んでいく。 「聴いてくれる人の心にこの歌を届けたい。聴衆の心を少しでも癒したいと思って、来る日も来る日も歌い続けているうちに……ある日、気付いたんです」 「……」 「いつの間にか、私自身が癒されていることに。――私自身が、救われていることに」  反町の、無表情を貫こうとする顔が、微妙にゆらいでいた。 「自分のために歌っていた時には苦しいだけだったのに、どこかの誰かのために歌い始めたら……知らない間に救われていた。知らない間に癒されていた」    結衣はそこで大きく一つ息を吸い込んだ。 「歌って不思議。……歌って素晴らしい」
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