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辺鄙
これはひどい。それが率直な感想だった。
シャマンダスに着いて、領主の城に行くと代官は既にいなかった。召使に話を聞くと、首都からの手紙が届いてから嬉しそうに次の任地へ向かったという。
領主を責める気にはあまりなれない。道中で見たところ、不毛の地というのが正直なところだ。通過した北東にあるクンザンの地とは雲泥の差で、隣でこうも違うのかとさえ思う。
ウィラとともに城の飾り気のない一室で、作戦会議と洒落込む。いきなり全員で話し合えば、絶対にややこしいことになる。主にリズのせいで。
そもそも実務面で言えばウィラと話し合うしかない。メイドのナールも使えそうだが、精神面が真っ当なので辺境に送られたという事実から立ち直るには時間がかかるだろう。
「問題はいつまで姫様がここにおられるかってとこだね」
「戻されるのは期待薄だな。陛下は戻して良くとも、体面のために人から進言されねば戻そうとはしない。大体、叙爵されたのだから数年はこっちに滞在は間違いない」
「数年ねぇ……でも、姫様のことだからここを豊かにするまで離れませんわ! とか言うんじゃない?」
ありそうなことだ。まぁその場合でも、戦場での生活も長い俺やウィラは粗食でも耐えられる。リズはその場を楽しんで生きる脳みそをしているので、案外大丈夫だろうが……メイドのナールは怪しい。
「兎にも角にも、人が欲しい。荒野でも育つ植物はあるのだから、苗や種はリズの金から買える。しかし、広めな領地に少ない人口ということは……」
「改善に割ける人数が少ないってことだね。ま、小さな村社会とかだとよくあることさ。一日を生きるのに時間を全部使ってしまう」
「……まぁやることは一つか」
「そうだね。最強騎士のコルビー君が、民の時間を台無しにする獣や魔獣、賊のやつらを切った張ったでなぎ倒すわけだ。いやー英雄だねぇ」
「証人無しの一人だと英雄にもなれんがな。あと、最強じゃなくて二番手だ」
一番良いのは賊を捕らえて、強制労働に処することだが絶対にリズが邪魔する。アレなら下手をすると魔獣すら可愛いと言い出しかねない。……そこが良いところなのだが。
ふにゃふにゃしてる癖に、意志が頑強なのは可愛いところだ。
「俺が出ている間、リズを頼んだ。ここに残っている兵数じゃ、山賊にも負けかねないから、万が一……」
「退路は確保済みだよー。基本だからね。でも、使える人材がいたらできるだけ確保してきてね。今のところ、賊がここを襲わないのは単に王国に逆らう気概がないだけだから」
分かっていると返して、少し黄昏れる。出立の前に起こる一悶着を想像すると、嬉しいやら面倒やらだった。
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