プロローグ

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 ラノリス王国。その首都であるエナリオンにて、一つの儀式が執り行われていた。  最も高い段にある玉座。その後ろには鐘と盾が描かれている。それはそこに座る者が最高権力者であると主張していた。  一つ下の段に座るのが王の子息である。本来は今、玉座の間の中央で傅いている女性もそこに立っていただろう。 「我が娘……イーリリーズよ。そなたにシャマンダスの地を任せ、シャマンダス女伯爵の地位を与える」  周囲に居並ぶきらびやかな服装の人々からは、嘆きの呻きもあったが、クスクスと笑う声の方が多かった。  女伯爵という地位は立場も難しいが、何よりも荒廃した古戦場が大部分であるシャマンダスという場所がイーリリーズにとって問題になるだろう、と人々は思った。  事実上の流刑に等しい。しかし、それまでイーリリーズの行動こそがそれを引き起こしたものなのだ。 「はい。拝命いたします」  金の髪に卵のような顔。美貌の王女はいつもと同じ顔と、いつも通りの顔で応じた。他を圧する美というも存在するが……彼女の場合気が抜けるような雰囲気を放つ。  ふにゃあとでも言うのか、真面目に応対する気が失せてしまうのだ。 「このイーリリーズ、必ずやご期待に応えて見せますわ」 「……は?」  どこかの誰かが疑問の声を発したが、そんなものどこ吹く風。ピンクと紫のドレスで一礼すると、イーリリーズは玉座の間から退出した。 /  とても晴れやかな気分だわ!  女伯爵は武功を積み上げた人物に続いて、わたくしが二人目。父様や兄上様がどれほど期待なさってくれていることか!  思えば迷惑ばかりかけていたが、それもシャマンダスの地を良くすれば恩返しになるだろう。  ああでも……シャマンダスは不毛の地と聞きます。そして領主となれば自分が軽々に動くわけにはいかないことでしょう!  でも大丈夫! わたくしにはとても頼れる騎士様と、お友達がいるんですもの!  皆でやれば怖くない、いい言葉ですわ。特に我が騎士たるコルビー様はきっと、いいえ必ず付いてきてくれる!  この時間なら皆、私の部屋にいるはず。門出のために皆で早速準備をして、出立するのです!  何を持っていけばいいのか分からないですけれども! 
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