蛍明 hotaru akari

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僕は空高く羽ばたいた。 高く、高く、森を抜け、 星の輝く夜空に届けとばかりに、 高く、高く、舞い上がった。 眼下には、仲間の光が見え、 その中で舞う彼女の光が、一際輝いて見えた。 戻って、彼女と一緒に踊りたかった。 だけど、笑われるだけだ。 僕はいい、だけど彼女が笑われるのは…… 彼女の光を曇らせたくなかった。 僕は、さらに高く、どこまでも高く飛んで行った。 行けるところまで行こう。力の限り飛んで行った。 やがて夜空の闇と僕は同化し、 妙な静けさが心を満たす。 静かに僕は何故生まれてきたんだろうと考えた。 迷う暗闇、心の中に、彼女の光がふわりと舞う。 それは、彼女を助けてあげるために、 僕は生まれてきたんじゃないだろうか。 いや、おこがましいかな。 救われたのは僕の方で、彼女は僕の空っぽの心に明かりをくれた。 それは、見た目の輝きだけではなく、心に灯る温かな明かり。 そんな思いで、周りを見回した時、 僕は、 ただの光ではなく。 心に灯る明かりが見える様になった。 必死に頑張っている、 仲間の心の明かりが見える様になった。 それから僕はみんなの所に飛んでいって、 かせるだけの力を貸した。 相手にされなかったり、周りから馬鹿にされたりしたこともあるけれど、 それでも、一生懸命、心の明かりが消えぬ様に、輝く様に。 飛べない仲間には飛び方を教え。 怪我した仲間には肩を貸し。 怒っている仲間には耳を貸して(わけ)を聞き。 震えてる子には、「大丈夫、大丈夫」と優しく声をかけた。 光の弱い子には、光りかたを教えた。  彼女に教えてもらった方法を思い出す。 「お腹から下に下に、お尻の方まで力を入れて。力を溜めて溜めて」 その子は僕が言った様に、何度も何度もお腹から下に下に力を入れた。 「そう、頑張れ!  行けーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 僕も力を入れて叫んだ! その子の、光がひときわ明るく輝いた。 「やった!!」声が重なる。 アレッ? なんだろう。 彼女の嬉しそうな顔が浮かぶ。 「ありがとう」その子はそう言うと、嬉しそうに舞い上がっていった。 良かった…… 僕の目から、何故か、涙がとめどなくこぼれ落ちた。 それから、僕は 体が動くだけ、飛べるだけ、 僕の心にも明かりが光輝く様に、 見える明かり全てに駆けて行った。 だけど、少し疲れたんだ。 もう、飛ぶ力もなくなった。
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