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「産まれてから半年で死んじゃうカブトムシは可哀想?」
「可哀想」
「だけどその生涯で、幼虫から成虫にカタチを変えて闘って結婚して、子孫まで残すんだよ。僕たちは半年じゃ、あんよすら出来ないのに」
「散った桜の花びらは可哀想?」
「どちらかと言えば、可哀想」
「私が散ったから来年も綺麗な花が咲くんだって、誇らしく思っているかもしれないよ」
「アルファベットでいつも一番ビリの、Zは可哀想?」
「え、Z?うーん」
「これはZが喋れるようになったら聞いてみよう」
三年生、四年生、五年生と学年が上がるにつれて、質問が難しくなる。最後は六年生の児童。
「亜弓。君は、可哀想かい?」
その質問に、皆の目が丸くなる。
「可哀想じゃ、ないです」
「それなのに僕が、君は可哀想だと決めつけたらどんな気分?」
「い、嫌な気分になります」
「どうして?」
「だって、エレン先生には何も話してないから」
「え?」
「私の悩みとか不安とか、何もエレン先生は知らないから……」
こんなこと言ったら失礼じゃないのかな、そんな不安を全身にかもし出しながら言った彼女に、エレン先生は微笑んで、ベストアンサーをありがとうと言った。
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