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今度の主人公は子猫だよ、そう付け加えてから、エレン先生は話し出す。
「ある雨の日、私は歩いていました。母さん母さんと鳴きながら、夜の小道でひっそりと」
子猫の鳴き声がミャアから母さんに変わったことに、皆が息を飲んだ。
「そこに知らない人間の女の子が通りかかりました。怖くて逃げようと思ったけれど、いきなり拾い上げられて、その子の家へと連れて帰られてしまいました。母さん助けて、と鳴きました」
皆の顔は、どんどんどんどん歪んでいく。
「家に帰ると、女の子と大人がもめ出しました。何を言ってるのかは分からなかったけれど、大きな声が怖かったです。私は殺されちゃうのかな、と思ったけれど、その女の子は毎日私を優しく抱いて寝てくれました。頭を撫でてくれました。女の子が悪い人ではないことが分かりました。だけど」
一旦口を噤むエレン先生。続きを悟った五、六年生が口元を覆った。四年生の僕の心臓はザワザワした。
「だけど」
エレン先生はゆっくりと口をひらく。
「だけど三日後、私は捨てられました。笑って手を振る女の子に鳴きました。どうして私を捨てちゃうの?と」
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