あの日の僕らを照らす朝

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 黒板の張り紙を見ると席に出席番号が書かれている。各自の出席番号に対応した席に座って待てということだろう。  番号を確認して席に座ろうとしたところで足が止まる。  明が座るはずだった席には既に他の生徒が座っていた。  短髪でツンツンとした髪が特徴の男子生徒は入学式までの暇つぶしにスマホをいじっている。  一応念のために番号を再確認したがどう見ても明の方が正しかった。  しかし男子生徒は気付く様子はない。  間違いを指摘しづらいが、かといって突っ立っているのも馬鹿らしい。 「あの」  聞こえてないのか、話しかけられていると思ってないのか男子生徒はこちらを見ようとしない。 「あの」  もう一回呼びかけるが、それでも気付かない。 「あの!」  意を決して声を大きくした。  それでやっと男子生徒は無言でスマホから顔を上げる。  彼の何だろうという表情に緊張が走ったが、それに耐えて言葉を続ける。 「そこ俺の席なんだけれど」  男子生徒は大きく目を見開いて自分の番号を見た後に、ものすごい速さで張り紙の番号を確認し「あっ」と声をあげる。 「間違えてたわ、ごめんごめん!」
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