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教室が沈黙に満ちていただけに、ただでさえ大きいその声は余計に大きく聞こえた。
男子生徒は慌てて席を立って正しい席に移動し、明も自分の席に座る。
見知らぬ相手に話しかけることは疲れたが、どうせしばらくすれば必要最低限にしか関わらない相手だろう。
入学式が始まるまでの間、明の意識がその男子生徒に向くことは一度もなかった。
「それじゃあ1人ずつ出席番号順に自己紹介してもらおうか」
入学式の後、教室に戻ってくるなり恐れていたことが始まった。
こうなることはわかりきっていたし覚悟していたはずだが、胸がざわつくのは止めようがない。
比較的早い番号になりやすい自分の名字がこの時ばかりは忌々しかった。
あっという間に明の番になり、覚悟を決めて立ち上がる。
固く握りしめた手から汗がにじんだ。
「風舟明(かざふねあきら)っていいます」
クラス中の視線が明に向けられる。
自分という存在を認識される事が強烈な違和感となって襲い掛かった。
その視線に何が込められているのか関係ない。ただ見ないでほしい。
「趣味は、映画です」
とりあえず無難にそれだけ言う。
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