あの日の僕らを照らす朝

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 最後にそう締めくくって朝陽は自己紹介を終えた。 (俺と同じだ…………)  ふとそんな事を考えてしまって頭の中で首を横に振った。  映画なんて一般的な娯楽なんだから自己紹介としては無難なものだろう。  それに趣味が同じだからといって必ずしも仲良くなれるわけではない。  そう思っていたのに。 「ねぇ、俺の名前覚えている?」  自己紹介の後の学校案内で1人歩いている明に朝陽が話しかけてきた。 「…………朝陽だよね」  何故近くにいた訳でもないのに話しかけてきたのか疑問に思いつつ答える。 「ああ、良かった覚えててくれたー!」  明るいを通り越してうるさいレベルにまで朝陽の声が跳ね上がる。 「そんなに喜ぶこと?」  朝陽のはしゃぎっぷりにふと言葉が口をついて出た。 「だって話しかけられそうなのお前しかいなかったから」 「知り合いとかいないの?」  興味というよりは知り合いがいるなら自分より知り合いの方にいけばいいのにという意味合いがあった。  人を認識している事自体がストレスな明にとってグイグイと話しかけられるのは負担でしかない。
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