三銃士

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 トレヴィルの叱責に反論したのは、アトスだった。豹の様な野性味溢れる眼差しを銃士隊長に向ける。 「お言葉を返すようですが、その報告はいささか間違っています。確かに酒場で護衛士に襲撃されましたが、店に迷惑をかけていたからではありません。護衛士は何の予告もなしに我々を不意打ちしたのです。私が早々に肩を負傷したので、ポルトスとアラミスも後退せざるを得ない状況でした。私の一本しか無い尻尾に誓って、これが真実です」  トレヴィルは、アトスの言葉に嘘が無いと判断した。誠実な性格なのはこれまでの付き合いで知っている。 「ふむ、どうやら枢機卿は国王に不正確な報告をしたようだ。だが、悔しい事に陛下は嘘を信じている。名誉回復の機会を待つしかないな」  トレヴィルがこう言った時、アトスが膝を付いた。胴衣の色が濃くなる。ちょうど肩の部分だった。 「これはいかん。傷が開いたか?」  トレヴィルの声に反応して、ポルトスとアラミスが両側から支える。 「アトス、大丈夫か」  アトスは、友の呼びかけに応えなかった。
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