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翌日。
「魔王! ここまでだ! 覚悟しろ!」
聖剣を携えた勇者が、数人の勇敢な仲間達を引きつれて、魔王城に乗り込んできました。しかし。
しーん……。
迎え討つと思われた魔物や魔族は、一切出てきません。
罠ではないかと警戒しつつ、勇者達は最奥部の魔王の間へ辿り着きます。
途端。
ぱーん! ぱーん!!
魔法の小さな花火が勇者達を出迎えました。
「なっ、なんだ!?」
「やっぱり罠か!?」
勇者の仲間達が焦って周囲を見渡します。
しかし、その中で、癒し手の少女だけは、まっすぐに玉座を見つめていました。
魔族達に囲まれ、座している、赤い髪に金色の瞳の青年。いつかどこかの村祭りで出会って踊り、一瞬で恋に落ちたけれど、名前も聞かないまま別れてしまったひとと、瓜二つです。
青年は、ガッチガチに緊張しているらしく、表情は固まり、全身が細かく震えています。
が、彼は油の切れた粉挽き装置のようにカクカクした動きで立ち上がると、少女の前にひざまずき、ひんやりとした手で、壊れ物を扱うかのように優しく、少女の手を取りました。
そして、言ったのです。
「ぼぼ僕と、ケケケケッコンしてください!!」
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