呪い殺され前夜

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「呪いを外に出さないよう、せめてこの部屋の中で最期を迎えてください」  俺が明日死ぬことを教えてくれた坊主は、あろうことか、俺を境内の一室に案内すると、そのまま外から鍵を掛けてしまった。全ての人間には生きる権利があるとか、みすみす見殺しにするのかとか、そういう大声を出しても決して返答がないことは、坊主が去ってから数分で理解した。  改めて部屋を見回してみると、こちらもまた不気味なものである。置いてある家具と言えばお札が貼り付けられた箪笥が一つだけで、あとは白い壁に円形の小さな窓がぽっかりと空いているだけだ。和室とは言え、殺風景加減にも限度がある。  小さな円形の窓のおかげで、外が暗くなっていくのがよくわかった。このまま俺は呪い殺されるのだろうか。たしかに、自分がしてきたことを考えれば恨まれても仕方がないとは思うが、こうして殺されるほどのことをしてきたかと言われればまた話が違う。俺は人の命を奪うようなことはしていない。 「くそっ!」  どうせ何をしても殺されるのだ。そう思って一番掴みやすそうな八頭身の人形を手に取ると、そいつを畳の床に思いっきりたたきつけた。その拍子に人形は首と胴体でふたつに分離し、ころころと床をかなしげに転がった。すっきりしたような気もしたし、かえって恐怖が増したようにも思えた。 「なんだ、これは」  人形の頭のなかに、小さな紙切れが入っているのを見つけた。拾い上げ、紙を広げる。
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